無料公開と無責任

私はふたこと目には、「無料公開は変わりません」と言います。

配信のお話をいただいても、「自サイトでの無料公開が続けられる」という条件が何より優先で、先日初めて印刷して本にした『Special Special Day』も、わざわざ「pixivで無料公開している物と同内容です」と、注意喚起しています。FANBOXのような、“支援”してもらうシステムも、利用しません。

一般的には、商業であれ非商業であれ、そこに、金銭がかかわるとき、公開期間なり公開部分を「限定」にするものです。だって、儲かった方がいいもの、お金払っても読んでくれる読者さんを大事にしたいもの、私だってそう思います。

その一方で、有料にすることで読んでもらえないよりは、無料でいいから、1人でも多くの人に読んでほしい、と思っています。それはそれで本当に本心です。

ただ、↑これはちょっときれいごとの方です。

私は「無料公開」にすることで、ずっと、責任逃れをしてきました。

「続きがいつになるかわからないけど、もしかしたら最後まで行かないかもしれないけど、無料だからいいよね!」って。


無料で読めるものならば、続きをちゃんと描かなくても作品に対する作者の責任はないのか?というと、それは違うかもしれませんが、ただ少なくとも、金銭的負担を求めて読んでいただいたものよりは、責任は軽いかな、と考えています。

今回、「冊子版」では、私は、この自分のスタンスを、一瞬忘れていました。

私の手元にある『Special Special Day』の冊子が、私にとって20年ぶりの「本」で、これがあまりにまぶしく、ずっと、画面上で見るものと思って描いてきたリメイク版『KING&QUEEN』も「本」にできるという、夢のような現実に浮かれ、さらに、「冊子ができたら欲しい」と言ってくださる方が存在することに、舞い上がってしまったのです。


冊子版の件でマシュマロにメッセージを下さった方々の中に、お二人、2000年の単行本版を今でも持っている、とお知らせくださった方がいました。涙が出ます。もう、本当にずっと昔の話だけれど、打ちきりとか私の力不足とか、いろいろあったあの時、それでも、1巻をお金を払って買ってくれた人に、2巻を出して最終回を届けることができたから、私は20年がたった今なお、ペンを持てるのだと思っています。

あの時のような、作品に対する作者の責任を、果たせないかもしれない今、「冊子版」を作るのは、あまりに愚かというものでした。本当にお騒がせしてごめんなさい。
 
 リメイク版『KING&QUEEN』は、その無責任を、自分に許して描いてきました。10年です。「無料公開」は、私にとって、ずっと、免罪符だったのですが、今、それもちょっと違うかな…と思っています。どんな形で読んでいる読者さんに対しても、それは無料でも有料でも、私の作者としての責任は、やっぱりあります。
今まで、それでも私は描けなかったので(他に優先することがある道を選んでいたので)、「いやなら読まないでいいです。ごめんなさい」みたいに、開き直ってきました。

ただ、いま少し状況が変わってきています。
娘が大人に近づき、親の方も、4人のうち、もう、たった1人となり、優先しなければいけないことから、次々解放されています。
その分、自分も歳を重ねてしまったので、健康がいつまで保てるのか、ということを現実的に考えるようになりましたが、だからこそ、今、急がないといけないと思っています。

描き上げること、そして、描き上げればそこに「紙の本」という夢の実現があり、こんな小さな作品にずっとついてきてくれて、その夢の共有を待っていてくれる人たちがいると、今回の冊子版の件で、知ることができました。

作品に責任を持つことに、もう一度挑戦しようと思います。でも、100%の自信があるわけではないので、それが、「冊子版構想」=完結したら、せめて、最終話スタートしたら、発行する、という着地点でした。

改めて、メッセージを下さった皆さま、そっと見守っていてくれた皆さま、ありがとうございました。

頑張ります。

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